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ワンランクアップの英語表現

2024.02.01

スキルアップ

第176回 「P!NKの名曲からセレクトした英語表現」

第176回 「P!NKの名曲からセレクトした英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

通訳現場、とりわけ初めて出かける場所や仕事の場合、実は緊張します。心配になるのは性格ゆえかと、かつてテノール歌手の方に尋ねたところ、「聴衆が30人でも3000人でもいつも同じぐらい緊張する」という答え。人間だからそれが自然なのでしょうね。そこで少しでも心を鼓舞するため、私もアスリートのごとく「自分を奮い立たせてくれる曲」を本番前に聴くようになりました。とりわけ元気をもらえるのがP!NKの”Blow Me (One Last Kiss)”。キャッチーなメロディで、歌詞が表しているのは「自尊心の大切さ」です。


https://youtu.be/3jNlIGDRkvQ?si=r9cDc3pKk-OA_f00

そこで今回はこの曲の冒頭に出てくる単語(knuckle, palm, jaw, knots)の4つに注目し、英語フレーズを見ていきましょう。


knuckle under 意のままになる

She finally realized that her self-worth is important, so she refused to knuckle under. (彼女は自分の価値が重要だとやっと気づいたため、意のままになることを拒否しました。)

「意のままになる、相手の要求に従う」を英語でknuckle underと言います。knuckleは「指関節、指の節」のこと。knuckle underは米英語で、18世紀初頭にお目見えしました。

一方、類似表現にknuckle downがあります。こちらは「真剣に取り組む」という意味。似ていますが異なりますよね。こうした句動詞を学ぶ際には、他の前置詞のバリエーションがあるか調べてみることをお勧めします。そのひと手間がみなさんの英語力アップにつながります!


palm off 手玉に取る

Recently, there have been a lot of fraudulent cases where the criminals palm off an innocent person. (最近、犯罪者たちが無実の人を手玉に取る詐欺事件が増えています。)

英語で「手玉に取る」をpalm offと言います。palmは「手のひら」のことで、これにoffが付くことで「手玉に取る、思い通りにあやつる」という意味になります。初出は19世紀初頭です。なお、palmの語源はpalmaで、「手のひら」の他に「ヤシの木」の語義もあります。palm oil(ヤシ油)は食用や石鹸などに使われていますよね。


make someone’s jaw drop (~が唖然とする)

His irresponsible manner made her jaw drop. (彼の無責任な行動に彼女は唖然としました。)

make someone’s jaw dropは「~が唖然とする」です。jawは「あご」ですので、あごがdrop(落ちる)ほど、口をあんぐり開いた状態で驚いている様子が想像できます。

ところでJaws(複数形)で思い出すのが、1975年の名作映画「ジョーズ」。ではなぜ複数形なのでしょう?検索すると諸説出てきますので、興味がある方は調べてみてくださいね。


tie someone in knots (~をひどく当惑させる)

His manager’s explanation tied him in knots, and he lost his concentration. (彼は上司の説明にひどく当惑し、集中力を失ってしまいました。)

「~をひどく当惑させる」を英語でtie someone in knotsと言います。tieknotが出てくると、tie the knot(結婚する)というおめでたい表現が浮かびますが、上記のフレーズは穏やかではありませんよね。

ところでknotは「結び目」という意味の他に、船舶や飛行機の速度単位「ノット」という語義もあります。語源は古英語のcnotta(押しつぶして丸める)から。かつては距離を表すために結び目を一定間隔で付けていたことから来ています。


いかがでしたか?今月は私のお気に入りの曲から単語を選び、それらを用いた表現を見てみました。音楽は人に寄り添い、励ましてくれるスグレモノ。私はそうした曲を複数用意しており、聞き返しています。ぜひみなさんも自分を勇気づける曲を探してみて下さいね。きっと見つかりますよ!


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトで日本語訳・解説を担当。大学や企業での学習アドバイス経験多数。各種サイトでコラムも執筆中。

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