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ワンランクアップの英語表現

2025.05.07

スキルアップ

第191回「工具関連の用語再び」

第191回「工具関連の用語再び」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

今から数年前、本コラムで工具関連の英単語を用いたフレーズをご紹介しました:

135回 「工具の用語を用いた英語表現」

毎回様々な側面から英語表現をお伝えしたいため、なるべく同一テーマは避けたいのが私の本音ではあります。でも、放送通訳現場にいると私にとって初遭遇のフレーズがたくさんあるのですよね。そこで今回も工具関連の単語を使ったフレーズをみていきましょう。


bludgeon  強要する

Although he was not directly in charge, the boss bludgeoned him into taking responsibility. (彼は直接の責任者ではなかったものの、上司は責任を取るよう強要しました。)

bludgeonは名詞では「棍棒(こんぼう)」、動詞では「棍棒で打つ」という意味です。また、「攻撃」や「強制する」といった語義もあります。上記例文は「強要する」という意味で使われています。私が初めてこの単語に出会ったのはCNNニュースでした。初めて聞く単語で全く訳が思いつかず、何とか乗り切ったことを覚えています。ちなみにどの辞書を引いても語源は不明らしく、18世紀中ごろから使われているとだけ書かれていました。語源がわかれば少しは想像がつくだけに、こうしたケースはなかなか同時通訳では厄介ですよね。

こうなると気になるのが「~dgeon」で終わる単語の存在。電子辞書のワイルドカード検索機能を使ったところ、curmudgeon(怒りん坊)、dudgeon(立腹)、gudgeon(セイヨウカマツカ〔淡水魚〕、騙されやすい人)、slumgudgeon(どろどろのシチュー)などがありました。いずれもポジティブなイメージから遠そうな単語ばかりでした!


hammer out 解決する

At last, we hammered out our differences on the issue. (ようやく私たちはその問題について意見の相違を解決しました。)

「解決する」を英語でhammer outと言います。ちなみに英語の発音は「ハマー」ですが、日本語では「ハンマー」と言いますよね。「サル」のmonkeyが英語では「マンキー」に近いのと同様、カタカナ英語は注意が必要です。

ところでベートーベンのピアノソナタにHammerklavier(ハンマークラビーア)という作品があります。これは「ハンマークラビーア」と言われるピアノの前身です。hammerには「ピアノの弦を叩くハンマー」の意味もあるのですよね。


wrench (事実を)曲げる

The government wrenched the fact instead of telling the truth (政府は真実を伝える代わりに、事実を曲げました。)

「レンチ、スパナー」を英語でwrenchと言います。一方、動詞のwrenchには「ねじる、ひねる」などの語義があり、上記例文のwrench は「(事実を)曲げる」という意味になります。

ところで事件や事故などのニュースでは、gut-wrenchingというフレーズがよく出てきます。これは「衝撃的な、断腸の思いの」という意味です。「消化管」はgutですので、まさにそれが捻じ曲げられるような苦しみということになります。


make a bolt 突進する

Our cat made a bolt for the door. (うちのネコはドアに向かって突進しました。)

「突進する」を英語でmake a boltと言います。「ボルト、締め釘」は英語でbolt。そこから転じて「急な飛び出し、逃亡」という意味もあります。「青天の霹靂」は英語でa bolt out of the blue。このboltは「稲妻」という意味です。

ちなみにジャマイカ出身のウサイン・ボルト選手は数々の陸上世界記録で知られています。英語表記はUsain Boltです。ウサインはアラビア語で「美、善」の意味。その速さからLightning Boltというニックネームも付きました。なお、史上最速と言われていたボルト選手ですが、その後、記録を破った選手も出てきています。


いかがでしたか?今月は工具を用いた英語表現をご紹介しました。なお、私は自分で工具を使って何かを作ることとは縁遠いのですが、イギリスにいたころは近所の人たちがDIYでせっせとモノづくりをしていました。自宅リフォームも楽しみながらみなさんしておられたことを思い出します。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学および通訳スクール講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2024年米大統領選では大統領討論会、トランプ氏勝利宣言、ハリス氏敗北宣言、トランプ大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラム執筆にも従事。

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