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ワンランクアップの英語表現

2025.10.01

スキルアップ

第196回「動物が出てくる英語表現」

第196回「動物が出てくる英語表現」

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗

ここ数年、日本ではクマの被害が相次いでいます。今までは山中にいたはずのクマが、温暖化などの影響で人里に出没するようになり、作物や人的被害は深刻です。絵本の世界では可愛いクマちゃんですが、様々な対策が求められています。ちなみに「クマ」のアクセント、私はずっと「ク」が強いと思っていましたが、正式には「マ」に強勢があります。でも童謡「森のくまさん」の歌詞を「♪ある日 森の中 く『ま』さんに 出会った」とはなりませんよね。うーん、考えてしまいます・・・。


今月はクマを始めとした動物が出てくる表現のご紹介です。


take the bear by the tooth 無用な危険を冒す

Professional interpreters would never take the bear by the tooth.  They will always study before their assignments. (プロの通訳者は決して無用な危険を冒すことはしません。業務の前に必ず勉強します。)


「無用な危険を冒す」「下手なリスクをとる」を英語でtake the bear by the toothと言います。文字通り訳すと、「クマの歯を取る行為をする」ということ。まさに危険な行動ですよね。そこから派生してこのような意味になりました。

上記の例文はまさに通訳者の実情!予習ゼロ、すなわち「ノー勉」で現場に行くなどありえません。中高生時代は誰もがテスト前に「全然復習してなーい!(=ノー勉)」をアピールしていましたが、さすがに通訳現場でそのような発言は出てきません。ちなみに「ノー勉」の英訳を調べたところ、take an exam without studyingでした。


lion’s share 一番大きい分け前

In the old days, it was the eldest son who inherited the lion’s share.  It’s completely different now. (昔は長男が相続で一番大きい分け前を得ていました。今は全く異なりますよね。)

lion’s shareは「一番大きい分け前」という意味です。この語源はイソップ物語から。獲物の分け前においてライオンが一番大きい部分を得ることから来ています。何しろライオンと言えば百獣の王です。納得できる表現ですよね。

ところで日本の大手生活用品メーカーのライオン。創業は1891年だそうです。一方、ハワイ発のフレーバーコーヒーで有名なLION COFFEE。こちらは元々アメリカ・オハイオ州で1864年に誕生したとのこと。奇しくも同じ19世紀後半というのが興味深いです。


as proud as a peacock 得意げに

The pupils came onto the stage as proud as a peacock to do their performance. (児童たちは得意げに舞台に出てきて演技を披露しました。)

as proud as a peacockは「得意げに」という意味です。オスのクジャクはメスを魅了する際、美しい羽根をこれでもかと広げます。その様子から「得意げに」という意味になっています。なお、このフレーズは詩人チョーサーが14世紀に作品の中で使っており、普及するようになったそうです。

ところで色のpeacock blueは「ピーコック青」のことで、つやのある青緑色を指します。気になる方はネットで画像検索してみてくださいね。


like a bull in a china shop 無神経に

Be careful when you are touching this artifact.  Don’t act like a bull in a china shop(この工芸品に触るときは注意してください。無神経に振る舞わないでくださいね。)

「無神経に」を英語でlike a bull in a china shopと言います。文字通り訳せば「陶器店にいる雄牛のような」ということ。壊れやすい陶器の店舗で獰猛な雄牛がいたら大変なことに。そこから転じて「扱いが乱暴」「無神経に」という意味になりました。

ちなみにbullは「去勢されていない雄の牛」で繁殖用、cowが雌牛(特に乳牛)です。一方、oxは去勢された雄牛で労働用とされています。calfは子牛、beefは牛肉。同じ牛でもたくさんあるのが英語の特徴です。


いかがでしたか?今月は動物が出てくるフレーズを見てみました。ところで私はJR線車内で放映されているTRAIN TVをよく眺めており、中でも「ひと駅、アニマる!」に癒されています。本稿でクジャクをご紹介したのも、クジャクの動画を観たからでした。連載のネタは意外な所にあったりします。


柴原 早苗
放送通訳者、獨協大学および通訳スクール講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2024年米大統領選では大統領討論会、トランプ氏勝利宣言、ハリス氏敗北宣言、トランプ大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラム執筆にも従事。

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