ワンランクアップの英語表現
2015.10.01
スキルアップ
第76回 繊維関連の表現
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
以前勤めていた職場の同僚は、「自宅でどのような衣類でも洗える」と語っていました。「要クリーニング」の表示があっても、自分なりに洗い方を工夫していたそうです。本人いわく、素材の繊維に応じて生地を傷めないようにしてきれいにいく工程が楽しいのだとか。その様子を楽しそうに語っていたのが今でも印象に残っています。

ちなみに「繊維」にもいろいろとあります。植物繊維に含まれるのは綿や麻、動物繊維にはウールやシルクなどがあります。私たちは動植物の恩恵を受けているのですよね。
今月は繊維関連の英語表現を見てみましょう。
1.fabric (社会などの)構造、組織
In order to understand the market, we need to know the economic fabric of society.(市場を理解するには、社会の経済構造を知る必要があります。)
fabric は「布地、織物」という意味で、cloth よりも堅いニュアンスがあります。ほかにも「織り方、合成物」という語義があります。今回ご紹介するのは「(社会などの)構造、組織」のことです。通常は the fabric of … (~の構造)という形で使われます。
ちなみに「でっちあげる」は英語で fabricate と言います。こちらはもともと fabric から生まれた単語です。「完全なでっちあげ」は total fabrication となります。布地から派生してデマ・でっちあげというのも興味深いですよね。
2.wash dirty linen in public 内輪の恥を人前にさらす
I don’t think it’s good to wash dirty linen in public. I don’t want to disclose my family dispute! (内輪の恥を人前にさらすのは良いと思わないですね。うちの家族げんかを公表したくはないですから!)
wash dirty linen in public は文字通り訳せば「汚いリネンを公の場で洗う」ですが、実際には「内輪の恥を人前にさらす」という意味で使われています。wash dirty laundry in public も air dirty laundry in public も同じ状況を指します。
ところで linen は日本語で「リネン、亜麻布」と訳しますが、辞書によっては「リンネル」という表記もあります。こちらはフランス語の linière が語源です。英語学習の際には、ぜひ語源まで調べてみましょう。意外な発見がありますよ。
3.dyed-in-the-wool 徹底的な
He was a dyed-in-the-wool traditionalist. He didn’t want to change anything.(彼は徹底的な伝統主義者でしたね。何事も変えようとはしませんでした。)
「徹底的な」は英語で complete や through、profound などがありますが、ここでご紹介するのは dyed-in-the-wool という表現です。このことばが生まれたのは中世で、完成した布になるのを待たず、raw wool(原毛)に直接染料を染みこませた様子を表しています。一説によれば、直接色を付けた方が色持ちも長続きしたのだそうです。
せっかく wool が出てきましたので、発音も確認しておきましょう。英語で wool は「ウル」と短く発音し、カタカナの「ウール」のように伸びることはありません。けれども tool や pool、stool、cool などはカタカナ同様に音を伸ばします。こうした違いがあるのも興味深いですよね。
4.cotton on to … ~に気づく
He soon cottoned on to what his child was trying to do. (彼は自分の子どもが何をしていようとしていたのか、やがて気づきました。)
cotton on to … は「~に気づく」という意味です。ここでは realize を使うこともできます。どちらかというとイギリスを中心とした略式表現で、オーストラリアやニュージーランドでもお目見えします。
cotton 自体はアラビア語の qutun(クゥトン)から来た単語で、インドの綿をアラブ商人がヨーロッパに伝えたことが語源となっています。オランダ語では Katoen、イタリア語では cotoneとつづります。なお、辞書で cottonを引くと語義の下の方に「好きになる、親しくなる」という動詞の意味もあります。辞書を引く際には上の方の語義だけで安心せず、ぜひ最後まで目を通してみて下さい。幅広く意味を知ることができます。
今月は繊維に関連した表現をご紹介しました。ところでグーグルの検索サイトでは検索結果を「ウェブ」「動画」などに絞り込むことができますが、私がよく使う機能に「画像」があります。「百聞は一見にしかず」です。今回も「綿の花」が気になり、画像検索で絞り込んだところ、美しい綿花の写真が出てきました。みなさんもこのように楽しみながら英語学習を続けて下さい。
柴原 早苗
放送通訳者、立教大学・獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSE にて修士号取得。ロンドンのBBC ワールド勤務を経て現在はCNNj、CBS イブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC 英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。
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