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2024.08.01

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第32回 Frailty:フレイルと猛暑そして大統領選

イメージと選挙

Biden Drops Out of 2024 Race ― 8月のコラムのテーマを決めて執筆に入ろうとした矢先の午前3時16分、衝撃の速報が舞い込んできました。

衝撃といっても、ある程度予想されていたことです。「撤退のケース」をシミュレートした新聞記事も多数出ていました。ですから、バイデン大統領がそのまま民主党の候補者になるという前提で本稿を書いて、公開直前に撤退を表明したらどうしよう、とも思っていました。

民主党内や支持者の間で不安視されていたのは健康状態です。コラムの構想を練り直している間にも、The New York Timesなどリベラル寄りの新聞には決断を賞賛するコラムが続々と上がっています。

トランプ氏とのテレビ討論は、その懸念を増幅させました。討論自体が防戦一方。弁舌が振るわず、宿敵からこんなパンチラインを食らってしまいます。

I really don't know what he said at the end of that sentence, and I don't think he did, either.

「終わりのほうは何を言ってるんだかよくわからなかった。言ってる本人もわかってなかったんじゃないか」

それ以上に「だいじょうぶかな?」と視聴者に思わせたのが、虚ろな様子です。記憶がおぼつかない、という認知機能の面だけでなく、肉体的にも動きが鈍く見えたりとか。それを表現するのによく用いられた言葉がfrailです。

frailというのは身体的に弱々しい状態、特に高齢者なら「よぼよぼした」状態です。対照的に、トランプ氏はわずか3歳差ながら快活でした。そして、銃撃事件では流血しながらも拳を突き上げてdefiant(不屈)、dauntless(豪胆)、vigorous(剛健)というイメージを焼きつけ、現大統領とのコントラストを際立たせました。

「風邪を引いていた」というバイデン陣営の弁解どおり、たまたま調子が悪かっただけで、次のチャンスではトランプ氏を論破できていたかもしれません。しかし、有権者の脳裏に残るfrailtyのイメージを払拭することは難しい。ましてや、ライバルがdefianceを印象づけた今となっては。それが選挙離脱という苦渋の決断につながったのではないでしょうか。

酷暑下でのフレイル予防

frailtyは医学的には「高齢者の健康と機能が危険水準まで低下するリスクが高まった状態」をいいます。つまり、まだ明確な疾患があるわけではないものの、ちょっとした罹患や転倒で寝たきりになるなど心身の健康を二度と取り戻せなくなる可能性が高い状態です。

日本では、このfrailtyを「フレイル(虚弱)」と呼び、「加齢により心身が老い衰えた状態」あるいは「健康な状態と要介護状態の中間の段階」と定義しています。

症状としては、歩行速度の低下や急激な体重(筋肉量)減少など。ウォーキングをはじめ運動に予防や改善の効果があるとされていますが、外出がためらわれるような酷暑が運動量を減らし、フレイル化を促すことが懸念されています。これは高齢者だけの問題ではありません。

ジョンズ・ホプキンス大学が推奨するのは、家の冷房の中でも整理整頓など活発に動くこと、意識してしっかり食べること、ポジティブな姿勢で人とつながることです。

3つ目については、social frailty(社会的フレイル)という言葉があります。これは、人とのつながりがないために、要介護状態に陥るリスクの高い状態です。たとえばsocially frailだと、転倒した時に助けを得られにくくなります。

できればin-person、face-to-faceのつながり、難しければonlineでもつながることが、重要なようです。コロナ禍中に活発化した、Zoom等を使った遠隔地の同級生とのオンライン飲み会や趣味仲間とのバーチャル集会で夏を乗り切るといいかもしれませんね。

【参考資料】
Stay Strong: Four Ways to Beat the Frailty Risk(ジョンズ・ホプキンス大学医学部サイトより)

村瀬隆宗


慶応義塾大学商学部卒業。フリーランス翻訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 英語翻訳コース講師。 経済・金融とスポーツを中心に活躍中。金融・経済では、各業界の証券銘柄レポート、投資情報サイト、金融雑誌やマーケティング資料、 IRなどの翻訳に長年携わっている。スポーツは特にサッカーが得意分野。さらに、映画・ドラマ、ドキュメンタリーなどの映像コンテンツ、 出版へと翻訳分野の垣根を超えてマルチに対応力を発揮。また、通訳ガイドも守備範囲。家族4人と1匹のワンちゃんを支える大黒柱としてのプロ翻訳者生活は既に20年以上。

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