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2025.09.01
翻訳
第45回 Plagiarism, Gentrification, Polarization…:英語長文問題で扱われそうなテーマ5選
英字新聞を日々読む立場から出題テーマを予想
大学入試の英語試験は、昔と比べてかなり難化しているようです。特に長文の量。当時の自分が今の試験を受けたとしたら、きっと解き切れずに終わることでしょう。そして語彙力。暗記すべき単語や熟語の数は相当増えているはずです。そして、ボリュームのある長文を片づけるには、難し目の語彙も深くたたき込んでおく必要があります。
もしテーマを予測できれば、関連語彙を押さえておくことで優位に立てそうです。そこで、The New York Times、The Washington Post、The Guardianの3紙を中心に毎日英字新聞に目を通している立場から、時事系で扱われそうなテーマを厳選しつつ、それぞれのkey words & phrasesを挙げてみます。大学入試のほか、英検などの資格試験にも役立ちますように!
1. 生成AI
pros and cons(賛否両論)を比較する文章展開になりがちなテーマです。generative AIのポジティブ面としては、assists rather than replace people(人に置き換わるのではなく人を助ける)、accelerate research and development(研究開発を促進する)、unlock human creativity(人間の創造力を解放する)など。この辺りの表現は英作文でも使えるようにしておきたいところです。
一方、ネガティブ面でよく見かける語彙は、originalityの対義語としてのplagiarism(盗用、パクリ)。大手エンタメ会社が生成AIによる画像作成はcopyright infringement(著作権侵害)だと訴えたというニュースもありました。学術論文でもAI使用による意図しないplagiarismが問題視され、academic integrity(学問的誠実性、誠実に学びと研究に取り組むこと)が重要視されています。
2. オーバーツーリズム
日本でも問題になりつつあるだけに、出題される可能性は十分にありそうです。inbound tourists(国外からの旅行者)が増えれば経済的に潤う一方、overtourismになれば桜シーズンの 浅草や清水寺のようなovercrowded destinations(過密状態の観光地)だらけになり、そのせいで旅先としての日本は魅力を失って一過性の人気で終わることにもなりかねません。ですからpromote sustainable tourism(持続可能な観光業を推進する)を目指すべきです。
そのためにはvisitor cap/quota(訪問者数制限:quotaは割当数、人数枠の意味)を設定するという直接的手段のほか、tourism decentralizationあるいはspreading tourism across regions(分散化)も有効です。gentrification(ジェントリフィケーション、都市の富裕化現象)もこの文脈で目にします。ある場所に何かをきっかけに富裕層が流れ込み、その地域の質が向上する半面、家賃や物価の高騰でもともと住んでいた住人が追い出されてしまう。これに似た現象が、観光地化によって起きるとされています。
3. ポピュリズム
rise of populism(ポピュリズムの台頭)、つまりpander to the masses(大衆に迎合する)、それによって真の国益よりも人気を追求するpopulistが勢いに乗る 世界では、そのfuel divisions(対立構造を煽る)政治姿勢が社会にpolarization(分断、二極化)をもたらします。アメリカの共和党と民主党の支持者間の溝はその代表例です。
大衆人気を買うために〜 Firstのように自国最優先姿勢を強める国が増えれば、geopolitical tension(地政学的緊張)は高まり、territorial dispute(領土紛争または領土問題)へと発展します。紛争準備のため、あるいはdeterrence(抑止力)としてmilitary buildup(軍備増強)を進める動きは強まるでしょう。competition for resources(資源争奪)も激化しそうです。
4. 気候変動
平均気温の最高記録が毎年更新される中で、climate changeは外せないテーマです。scorching(焼けつくような)あるいはsweltering(うだるような)暑さに加え、sudden downpours(ゲリラ豪雨)も困った問題になっています。heatstroke(熱中症)は気温がそれほど高くなくても湿度が高ければ要注意です。
対策のひとつとしてenergy transition(エネルギー転換)があります。日本ではnuclear restart(原発再稼働)が進むとともにencourage renewable energy use(再生可能エネルギー利用を奨励する)という方向性もありますが、一方でsolar farms(太陽光発電施設、メガソーラー)が景観を損ない、土砂災害のリスクを高めるという問題も起きています。ちなみに、火力発電はthermal power generationよりもpower generation using fossil fuels(化石燃料を使った発電)という表現のほうが一般的です。
5. 物価高
deflation からinflationに転じた日本経済。prices(物価、複数形)が上がるということは、裏を返せば同じ1万円で買えるものが少なくなる、つまり1万円の価値が下がるということで、これをdecline in the value of money(貨幣価値の低下)あるいはerosion of purchasing power(購買力の低下)と表現します。
これを抑制するための政策として一般的なのはraise interest rates(利上げを行う)であり、これはtighten monetary policy(金融政策を引き締める)とも言います。その決定はcentral bank(中央銀行)の仕事ですが、利上げには景気抑制の効果もあります(なぜなら事業のためにお金を借りる際の金利が高くなり、これは企業活動にとってマイナスだから)。そのため、アメリカでは大統領がむしろ利下げを促そうとpolitical interference(政治介入)を試み、undermine central bank independence(中央銀行<アメリカではFederal Reserve>の独立性を損なう)という状況が懸念されています。

慶応義塾大学商学部卒業。フリーランス翻訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 英語翻訳コース講師。 経済・金融とスポーツを中心に活躍中。金融・経済では、各業界の証券銘柄レポート、投資情報サイト、金融雑誌やマーケティング資料、 IRなどの翻訳に長年携わっている。スポーツは特にサッカーが得意分野。さらに、映画・ドラマ、ドキュメンタリーなどの映像コンテンツ、 出版へと翻訳分野の垣根を超えてマルチに対応力を発揮。また、通訳ガイドも守備範囲。家族4人と1匹のワンちゃんを支える大黒柱としてのプロ翻訳者生活は既に20年以上。
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