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村瀬隆宗のプロの視点『LEARN & PERFORM! 翻訳道(みち)へようこそ』

2026.08.03

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第56回 Redemption:贖罪からポイント交換まで

第56回 Redemption:贖罪からポイント交換まで

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語翻訳者養成コース講師 村瀬隆宗

なぜ「買い戻すこと」が「贖罪」になったのか

今回は宗教から日常まで幅広く使う単語として、redemptionを取り上げます。こういう、いわゆる多義語を攻略するためにまず大事になるのは、根幹的な意味をとらえることです。そのためには、語源までさかのぼるのも有効です。

動詞形のredeemの語源は、ラテン語のredimere。redはback、emereはbuy、つまり「買い戻す」あるいは「犠牲を払って取り戻す」という意味です。

現在でも、redeemは質入れした品の買い戻しに使われます。
He redeemed his watch from the pawnshop.
(質屋から腕時計を買い戻した)

当時、それよりよく使われたのは「奴隷を雇い主から金銭を支払って買い戻し、解放する」という文脈でした。ここから転じて、キリスト教の世界では「イエス・キリストが自らの命を犠牲に、人類を罪から解放した」という意味でredeemが使われるようになりました。
Christ redeemed humanity at the cost of his own life.
(キリストは自らの命を犠牲に人類を救い、解放した)

そのため、redemptionは「救済」を意味すると同時に、キリストが払った犠牲にフォーカスを置いて「贖罪(しょくざい)」の意味も持つようになったのです。

通訳ガイドの仕事で、日本の宗教観に強い関心を持つあるアメリカ人ゲストが、こう語っていたのを覚えています。「私はキリスト教の信者ではないが、イエスの信者だ。イエスを信じることによって、そのredemptionによって天国行きが保証されるからだ。すると、不安なく生きることができる。日本では将来への不安が重石になっているというが、君もイエスを信じるといい」

日常での使われ方

また、redeem/redemptionは金融関連でも使われます。企業や国が銀行だけでなく広く一般に借り入れを募りたいとき、債券(bond、取引可能な借用証書のようなもの)を発行します。国が発行するのが国債、企業が発行するのが社債です。投資家は利息や値上がり益を狙ってこれを購入します。満期到来などで発行体が借りたお金を支払って債券を買い戻すことを、redemption(償還)といいます。
The company will redeem the bond at maturity.
(満期時に債券を償還する)

投資信託については、逆に投資家が持分をファンド(投資信託の運用者)に返して現金化することをredemptionといい、これは「解約」と訳されます。
I redeemed 500 shares in the mutual fund.
(投資信託の持分を500口解約した)

堅そうな単語ですが、もっと日常的にも使われています。たとえば、points redemptionとは「ポイント交換」あるいは「ポイント利用」です。貯めていたポイントを犠牲に、特典などを手に入れるということです。
You can redeem your points for merchandise.
(ポイントをグッズと交換可能)

スポーツでは、負け続けた後の大きな勝利など、「起死回生」、「名誉挽回」、「雪辱」の成功を意味します。苦難の末に勝ったり得点したりして自らを救済する、という感じです。
The team redeemed itself by winning the game after a series of losses.
(負け続けたのちその試合に勝ってうっぷんを晴らした)
He redeemed himself by scoring the winning goal after missing the penalty.
(PKを外したが決勝点を決めて名誉を挽回した)

そのほか、beyond redemptionは文字通り「救いようがない」。また、一般的な内容でも「名誉挽回」そして「償い」の意味で使います。
She redeemed herself by working hard.
(頑張って名誉を回復した)
He sought redemption by helping those he had hurt.
(傷付けた人たちを助けて過ちを償おうとした)

よく映画の名作に挙げられる『ショーシャンクの空に』の原題はThe Shawshank Redemptionです。冤罪で投獄された主人公のアンディは脱獄に成功して悲惨な刑務所生活から救われ、人生を取り戻しました。その獄中の友人レッドはアンディとの友情を経て希望や生きる意味を取り戻し、人間性を回復しました。だからこそのredemptionなのでしょう。

多義語を極めるために

さて、多義語攻略法として「語源などを通して根幹的な意味をとらえること」を挙げましたが、もうひとつ重要なことがあります。それは、生の英語にたくさん触れて、さまざまな使われ方に遭遇することです。

単語帳で辞書的な意味を1から5まで暗記するだけでは、頭に入りにくいだけでなく、実際にどのような形で、どのようなニュアンスで使われているのか、把握できません。英字の新聞や書籍を大量に読み、ニュースを大量に聞いて、いろいろなredemptionに出遭ってください。

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村瀬隆宗


慶応義塾大学商学部卒業。フリーランス翻訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 英語翻訳コース講師。 経済・金融とスポーツを中心に活躍中。金融・経済では、各業界の証券銘柄レポート、投資情報サイト、金融雑誌やマーケティング資料、 IRなどの翻訳に長年携わっている。スポーツは特にサッカーが得意分野。さらに、映画・ドラマ、ドキュメンタリーなどの映像コンテンツ、 出版へと翻訳分野の垣根を超えてマルチに対応力を発揮。また、通訳ガイドも守備範囲。家族4人と1匹のワンちゃんを支える大黒柱としてのプロ翻訳者生活は既に20年以上。

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