ワンランクアップの英語表現
2012.02.02
スキルアップ
第32回「bootを使った」英語表現
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
今回はbootを使った表現を見てみましょう。
1.He pulled himself up by his bootstraps and became successful.(彼は自力で苦境を乗り切り、成功しました。)

bootstrapとは「(編み上げ靴の上端にある)つまみ皮」のことです。pull oneself up by one’s bootstrapsで「自力で苦境を乗り越える、独力で成功者となる」という意味になります。
この表現の由来は定かではありませんが、1922年にジェームズ・ジョイスが記した「ユリシーズ」ではすでに使われていたそうです。一方、IT用語でも「ブートストラップ」という言葉があり、これはコンピュータに電源を入れてから操作ができる状態になるまで自動的に行われる一連の処理を指します。
ところで一時期はやったダイエット法で「ブートキャンプ(boot-camp)」というのがありましたね。これはアメリカ海兵隊関連の俗語で、「boot=兵士が履く長靴」から来ています。これが転じて「新兵の訓練基地」という意味になりました。兵士の訓練さながらのハードなダイエット法で、日本でもずいぶん話題を呼びました。
2.Although we failed in our last project, the boot is on the other foot.(前回のプロジェクトでは失敗したものの、劣勢を盛り返しています。)
西洋ではかつて靴が左右同じ形で作られていました。しかし18世紀に入り、右と左それぞれの形が誕生したのだそうです。つまりそれまでは片方の靴がしっくりこなければ反対の足で履いて合わせることができたわけです。この表現はそのような状況から生まれました。
なお、アメリカ英語ではThe shoe is on the other leg.と表現することもできます。
3.Since he broke the company rule, the management gave him the boot.(社内規則を破ったため、彼は解雇されました。)
英語には「解雇する」という言葉がたくさんあります。fireやsackなどはおなじみですよね。一方、「give+人+walking papers」(アメリカ英語)や「give +人+marching orders」(イギリス英語)などもあります。ちなみにアメリカでは解雇通知のことをpink slipとも言いますが、これは解雇通知書がピンク色をしていたことに由来するという説があります。
4.Downloading that software is illegal. Bootleggers will be prosecuted.(そのソフトウェアをダウンロードすることは違法です。違法コピー業者は起訴されます。)
bootlegは動詞で「(酒など)を密造する」という意味があります。もともとカウボーイが禁制品を長靴の中に隠し持っていたことに由来するそうです。それが転じて「密造する」「海賊版を作る」という意味になりました。名詞でも使われ、その場合は「密売酒、海賊版」のことです。
ちなみに裾が広いボトムスのことを「ブーツレッグパンツ」とも呼びます。アメフトでは「ブーツレッグ」という技もあります。
柴原 早苗
立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科兼任講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSE にて修士号取得。ロンドンのBBC ワールド勤務を経て現在はCNNj、CBS イブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC 英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。
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