ワンランクアップの英語表現
2026.07.01
スキルアップ
第205回「shotを用いた英語表現」
アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
先日ラジオCMを聴いていると「ナイスショット!」ということばが聞こえてきました。「ん?これって和製英語かな?」と調べたところ、どちらかというと”Great shot!” の方が通じるのだとか。片仮名というのは便利なようでいて、英語に訳す際には調べた方が良いなあと感じた次第です。

今月はこの「ナイスショット」に出てくるshotに注目。4つ表現をご紹介します。
1 I call all the shots. (決定権は私にある)
In our next project, the manager calls all the shots. (次のプロジェクトでは、マネージャーにすべての決定権があります。)
I call all the shots(決定権は私にある)は、アメリカ・トランプ大統領がイランとの交渉において述べたセリフです。上記例文はその応用編。call all the shotsは「全ての決定権を握る」と訳すことができます。
このフレーズの語源はいくつかあるのですが、「射撃場」から生まれたとされる説が有力です。射手が「弾丸(shot)の狙い場所」を「大声で宣言(call)したこと」が語源とのことです。
2 give it a shot (やってみる)
I have never tried Japanese calligraphy before, but I will give it a shot. (日本の書道は試したことがないのですが、やってみましょう。)
give it a shotは「やってみる、挑戦してみる」という意味です。こちらも例文1同様、射撃に由来しています。具体的には「試しに一発撃ってみる」という意味で使われ始めたのだそうです。その後、「成功失敗を問わず、ダメ元でトライしてみる」という意味になりました。なお、似た表現でgive it a tryもありますが、こちらの方が丁寧なニュアンスになります。give it a shotの方が口語的です。英単語一言で言うならば、attempt(試みる、挑戦する)やtry(やってみる)が良いでしょう。ちなみにshot自体の初出は12世紀以前で、古英語sc(e)ot(射撃、発射)から来ています。
3 a long shot (望み薄)
It might be a long shot, but let’s ask the boss if he will approve our idea. (望み薄かもしれないけれど、上司がアイデアを承認してくれるか聞いてみよう。)
a long shotは「望み薄」という意味です。これもやはり射撃が由来で、「遠くからの射撃では命中するのが極めて難しい」という意味から来ています。確かに近い方が命中率は高くなりますよね。なお、競馬の世界でこの表現は「大穴」という意味です。
他にもby a long shotというフレーズがあり、これは否定を強調して「全く」という意味になります。たとえば、She didn’t say that by a long shotは「彼女はそんなこと全く言わなかった」という具合です。
4 a cheap shot (不当な攻撃)
The politician took a cheap shot at his rival during the public debate. (その政治家は公開討論会の際にライバルに対して不当な攻撃をしました。)
「不当な攻撃」を英語でa cheap shotと言います。この表現の由来はアメリカンフットボールで、ここでのshotは「激しいタックル」を意味します。cheapは「安っぽい、品が無い」という意味であるため、そこから「不当な攻撃」という意味になりました。
なお、上記例文ではtake a cheap shot(不当な攻撃をする)となっていますが、攻撃を「浴びせる」と強調するのであれば、The politician hurled cheap shotsとすることもできます。hurlは「激しく投げつける」という意味であり、次々と攻撃する様子をshotsという複数形で表しています。でもこのような状態、たまったものではありませんよね(笑)。
ちなみに英語で「(選挙運動などの)泥仕合」はmudslingingと言います。初出は19世紀後半で、slingは「投げつける」という意味。活用はsling/slung/slungです。類語を覚える際には活用形も覚えておくと、さらにボキャブラリーアップに繋がります。
いかがでしたか?今月はshotを用いたフレーズを見てみました。ところでshotには他にも「(薬の)一服」「注射(一刺し)」という意味があります。薬の場合は「液体の薬」というニュアンスが強く、たとえばPour yourself a shot of cough syrup なら「シロップを一服飲みなさい」という意味になります。私は数週間前、突然声が出なくなるというハプニングに見舞われました。咳は出なかったのですが、数日間発声禁止を耳鼻科で言い渡されました。ただ、発声というのは筋肉運動なのですよね。数日後に解禁になった際、いざ声を出そうとしても最初のうちは枯れていたのです。筋トレ不足ということでした。幸い今は戻ってきています。商売道具ゆえ、大切にしなければ!
柴原 早苗
会議通訳者・放送通訳者、獨協大学および通訳スクール講師。上智大学卒業。学生時代から通訳技法を学ぶ。ロンドン大学LSEにて社会行政学修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。報道現場では米大統領選挙、スポーツ、ビジネス、医学、芸能など幅広いニュースの同時通訳を担当。映画「謝罪の王様」(2013年/脚本・宮藤官九郎/主演・阿部サダヲ/監督・水田伸生)に放送通訳者役として出演。
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